FXRノックアウトマウスについての論文が、Biochemical and Biophysical Research Communications (BBRC)で公開されました。
FXR(Farnesoid X Receptor)は、主に肝臓や腸で発現し、コレステロール・脂質・糖など様々な栄養素の代謝制御を担う、DNA結合ドメインを有する転写因子です。
2000年のCELL誌に報告された世界初のFXRノックアウトマウスは、FXRの最終エキソンを欠損させており、代謝に異常は見られたものの正常に発育しました。一方、ヒトではFXRのDNA結合ドメインに変異が入ると、生後すぐに重篤な肝障害が起こり死亡する、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症5型(Progressive familial intrahepatic cholestasis ; PFIC5)を発症します。この正常発育するFXR-KOマウスと致死的なヒトPFIC5の表現型の違いは長らく不明でした。
今回、我々は遺伝子編集技術を用いて、FXR遺伝子のDNA結合ドメイン以降を欠損させた、新たなFXR-KOマウスを作出しました。その結果、ヒトPFIC5患者と同じく、重篤な肝障害や血液凝固障害が確認され、さらに腎障害も起こっていることが観察されました。本研究は、FXRがこれまで考えられていたよりも多くの臓器で重要な機能を有することを示唆しており、本研究室で作出した新たなFXR-KOマウスは、PFIC5モデルとして疾患メカニズム解明や治療法の開発に貢献するものです。
Comments